宮前 保子
“イングリッシュガーデン”の源流―ミス・ジーキルの花の庭
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ミス・ジーキル |
読みやすい本ではないが、ミス・ジーキルはどんな人物だったのか、丁寧に伝えようとしていることが感じられる。
またジーキルのガーデニング理論やカラープランニングについてもひとつ、ひとつ解説していて実際の植裁に役に立つことが魅力。
とくに植物を愛し、自生植物と外来植物をガーデニングプランに入れながら、どうしたら彼らが共存できるか?どう人が関わっていくかを模索していたジーキルの本当の姿を鮮明に教えてくれる。
”植物にとってベストなものが庭にとってもベストであり、植物の尊厳と品位を認めること”ジーキルの主張は、今でもガーデニングを行なっているものには耳を傾けるべきことかもしれない。
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カラーガーデン−花の配置 |
ガートルード・ジーキルは19世紀後半から20世紀初頭に活躍したイギリスの庭園設計家。ヴィクトリア朝後期に新興したミドルクラスの郊外住宅の庭を数多く手がけたことで知られ、現代のイングリッシュ・ガーデンの源流に当たる。ジーキルは庭園史では必ず名前の挙がる人物だが、日本で本格的に取り上げたのは本書が最初。
ジーキルの生涯、ガーデンプランニングが詳細に取り上げられており、写真や図も多いのでわかりやすい。特にカラープランニングと呼ばれる手法(花壇をいくつかに区画し、それぞれ青、黄金、緑など、花・葉の色で統一したカラーガーデン)については、理論的背景から具体的な植物名まで丹念に拾われており、実際の庭造りにも役立つだろう。
たどたどしいながらも「花の庭」の登場する歴史的背景にまで踏み込もうとする意欲が感じられ、現代のイングリッシュ・ガーデンの意味合いについても再考させられる。